荒城の月幻想曲(マンドリン)

服部正のマンドリン作品にはよく「荒城の月」や「蝶々」といった日本の有名なメロディーを使った変奏曲的なものがあります。
この「荒城の月幻想曲」もその一つで、慶応義塾マンドリンクラブにとっては演奏旅行等でよく演奏された曲です。特に海外の演奏旅行では「日本の音楽」の紹介として非常に手頃で使いやすい曲でした。そういった意味では演奏回数は非常に多い曲と思われます。
この曲が作曲されたのは意外と遅く1955年9月ということであり、服部正47歳の時でした。

編成がマンドリン、マンドラ、ギター、マンドチェロ等の通常のアンサンブルに管楽器の「フルート」を登用した形になっています。
ここではフルートの目立つソロは無く、冒頭のマンドラのテーマの部分やマンドリンにかぶせて演奏する形になっており、どちらかというとマンドリンオーケストラの「音の厚み」のサポートに徹する役割になっています。

マンドリンオーケストラでフルート等管楽器を演奏する側は非常に細かな配慮が必要で、ピッチ(音程)を合わせる事は当然、テンポもマンドリン群とずれないように気遣う一方で、あまり目立たなくしながらも存在感を出すという非常に抽象的な努力も要するパートでした。特にマンドリン族はヴァイオリン族と違って弦をはじいて音を出すので音の立ち上がりが非常に早く、ステージの後方にいる管楽器は往々にして「遅れる!(わずかずれて遅く音が出る)」と指揮者等からクレームを頂く事が日常茶飯でした。(自分が演奏したのでよく苦労が分かります、、、)

もしマンドリンオーケストラの本番をお聞きになったときに管楽器のパートが「今一つ」とお感じになった際は、こういった背景がある事をご賢察頂き暖かい目で見守ってあげてください!

荒城の月幻想曲01 荒城の月幻想曲02