マンドリンオーケストラでの管楽器④

普通のオーケストラと違う管楽器の吹き方

 いよいよ実際の演奏での話題に入ります。
 まず、ヴァイオリン族は「擦弦楽器」という「弦をこすって音を出す」という楽器群に入ります。一方マンドリン族は「撥弦楽器」という「弦をはじいて音を出す」楽器群になります。これはどちらにも属さない管楽器群からしてみると、極めて大きな環境の変化になります。

服部正指揮グレースノーツ
(ヴァイオリンオーケストラ)
服部正指揮慶應義塾
マンドリンクラブ

 擦弦楽器は弓が弦に触れてから動かすことによって音が出るため、いわゆる「音の立ち上がり」に若干時間がかかります。これは息を吹いて管の中に入れて音を出す管楽器との「音の立ち上がり」の時間的差異は、それほど目立たないイメージです。
 ところが撥弦楽器は弦を指やピックで弾いて音を出すため、音の立ち上がりが非常に早くなります。ヴァイオリン族でも「ピチカート」という奏法がこちらに該当します。この場合管楽器との時間的差はかなりはっきりしてきます。

 一般オーケストラの管楽器の方が賛助でマンドリンオーケストラに参加される場合に、まず面食らうのがこの違いです。それでなくても後ろの方に座らされるため、指揮者からも「遅れる!」とよく指摘されます。
 特にテンポの速い曲では楽譜の小節の頭を揃えるのに極めて大変な努力が必要であり、ここでさらに指揮者がテンポの変化(アッチェレランド、リット等)をやるとなると、それに合わせるのが至難の技です。

 一般オーケストラではコンサートマスターがヴァイオリンの弓の上げ下げや体の動きが比較的大きいので、「視覚的」にも前列の弦楽器群とのテンポを合わせる事が難しくありません。一方でマンドリン奏者の演奏の動きは手元が中心なので動作が小さいため見えづらく、自分が出している音がタイミング的に合っているのかが非常に判断しづらくなっています。

 また音量もヴァイオリンとマンドリンの個々の楽器では違い、マンドリン族は比較的に音量が小さくなります。従って 小さな編成のアンサンブルで管楽器を演奏する場合、 ピアノの部分のマンドリン群の音が聴きづらく合わせるのに苦労したり、必要以上に音を抑えて吹くことになるため、一般オーケストラではそれほど難しくなかったパッセージも突然難易度が高くなる場合もあります。

 これらの解決策はやはり長年マンドリンオーケストラの中で演奏する「慣れ」と、指揮者やオーケストラの皆さんの動きの「読み」を鍛えていくしかないと思われます。特に「音の立ち上がり」の差異については、なかなか体得できるまで時間がかかるのが現状です。。
 賛助出演の管楽器の方々の場合、練習参加率も現行メンバーに比べて少なくならざるを得ず「慣れる」前に本番を迎える事が多くなります。従って演奏会本番での演奏では「仕上がりに遜色のないような」慎重な姿勢にならざるを得ません。言ってみれば「守り」の演奏になりがちです。

 次回は「音の立ち上がり」だけでない「音の時間差」について、「演奏会場でのシミュレーション」にて多少科学的にご紹介したいと思います。

館長
1955年 服部正の長男として東京で生まれた。                     1978年 慶応義塾大学卒業(高校よりマンドリンクラブにてフルート担当)        同年    某大手電機メーカーに入社(営業業務担当)                  2015年 某大手電機メーカーグループ会社を定年退職                  現在 当館館長として「服部正」普及活動従事       

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