先般服部正が「クラリネット五重奏曲を作曲した。」とのご報告をいたしました。
その曲の存在を発掘していただいた「ミッテンヴァルト社」の稲原様のご尽力で、このほど同曲のCD化が実現する事になり、先日東京の五反田文化センターにて収録が行われました。
今回はクラリネットに千葉交響楽団首席クラリネット奏者の伊藤めぐみ氏、そして実力派の若き弦楽器奏者メンバーにお集まりいただき、非常に丁寧に、そして情熱的に演奏をして頂きました。本曲の他、大栗裕氏、平井康三郎氏のクラリネット五重奏曲、菅原明朗氏のクラリネットソロ曲の4曲でのアルバムとなるそうです。
正直以前この曲のご紹介はしたものの「本当にこんなジャンルの音楽を服部正が作曲したのだろうか?」と疑心暗鬼に思っていましたが、今回実際の皆さんのくりなす音楽を聴き「服部正の音楽に間違いなさそうだ」と確信出来ました。
まず、曲想、ハーモニーが非常に分かりやすく、聴き心地の良い音楽であった事、そして何よりも第2楽章の「孔雀」でのクラリネットの甘く切ないメロディが、1950年代に作曲された「お姫様シリーズ(人魚姫、かぐや姫、シンデレラ等)」のヒロインが歌うアリアに非常に似ていた事。これを聴き、ひょっとしたら戦前の作品かと思っていた邪推が外れ、NHKの保存状況から類推していた1950年代前後という仮説が有力となりました。そして服部正が大事にしていた中音域のメロディもしっかり弦楽器奏者が朗々と演奏し、見事なアンサンブルを実現頂きました。
さらに驚いたのは、この五反田文化センターのホールの響きが素晴らしかった事。特に弦楽器の室内楽には非常にそりが合っているようで、そこにクラリネットの哀愁の音色が織りなす響きは格別なものがありました。
いずれこの録音が公開されると思われますので、その際にはまたご案内申し上げます。
今回の録音を実現頂いた稲原様、そして演奏していただいた皆さま、本当にありがとうございました。