マンドリンオーケストラでの管楽器の「慣れ」と「読み」
マンドリンオーケストラのコンサートで比較的管楽器が上手、と思われた場合、この奏者たちが「慣れ」と「読み」が優れているといえます。
マンドリン、ギターという撥弦楽器といつもアンサンブルしていると、体がそのタイミングを覚えてしまうのもあり、また一方で同じ楽団にある程度いると指揮者や他のパートの動きが予測でき、いわゆる「慣れ」による「読み」が的中する確率が高くなります。
例えば「服部正の指揮は、最後に盛り上がるところではテンポが遅くなることが多い。」とか、「この指揮者はフェルマータの伸ばしが本番ではさらに長くなる。」等を経験していると、その部分の直前で目いっぱい息を吸って備えるような対応が反射神経として動いてしまいます。また「こういうタイプの曲はティンパニが走る」とか「ピアノの部分でもメロディの所ではマンドラの音が大きめになる」等の楽団の個性まで体に叩き込まれてしまっています。
こうなってくると様々な場面で「攻め」の演奏が可能になってきます。
自楽団に管楽器の正団員がおらず賛助をいつも呼ばれる場合は、この部分がハンディとなります。賛助で来られた管楽器の方々は「演奏会に失礼があってはいけない」という意識が強いため、無謀なことはせずに周囲の状況を鑑みながら慎重な演奏をします。これを「守り」の演奏と言っても差し支えないでしょう。当然前にご紹介した「フライング演奏」はなかなかやりにくい状況です。
私も別の団体に賛助で呼ばれた事が何回かありましたが、練習参加機会が正式団員よりも少なくなりがちな上、オーケストラの人間関係についても不明な部分が多く、その中で立ち回る事の大変さは自分が所属団体で演奏する何倍もの気苦労が発生しておりました。
(練習で「間違えてはいけない」と思いながら「間違えてしまった!」時も、指揮者や周囲からの叱咤は無く極めて寛大な気遣いを受けてしまうため、逆にプレッシャーが余計にかかってしまう事がしょっちゅうでした!)
したがって、通常管楽器のメンバーがいらっしゃらず賛助をお招きする場合、出来る限り以前ご協力頂いたメンバーを継続して呼ばれた方がよろしいと思います。
この「慣れ」と「読み」は1~2回の演奏会経験ではなかなか体得できず、練習の参加頻度以外にも他のパートも含めたコミュニケーションがどこまで浸透しているかにも大きく影響します。練習後の茶話会、飲み会にもたまに入って頂くとこの距離が縮まり、演奏の積極性がさらに進化します。特にマンドリンオーケストラでの管楽器の存在は「主流派」では全くないので、こういったマンドリン奏者などの主流派の方々とのコミュニケーションはぜひ取っていただく事をお勧めします。(「主流派」は管楽器の事をそれほどご存知でない方も多いので、、、)
実はKMCが昭和の時代に多方面に演奏旅行に行っていたのも、服部正の策略としてこの「慣れ」と「読み」を管楽器だけでなくオーケストラ全体に浸透させたことによるレベルアップ作戦だったのかもしれません。
同じプログラムを何日も同じメンバーでやり、演奏会後は宿で酒を飲みながらコミュニケーションを深くする、これぞ知らぬ間に「慣れ」と「読み」が醸成されるポイントだったのでしょう。
「マンドリンオーケストラでの管楽器」と題し6回にわたり連載させていただきました。お付き合い頂きありがとうございました。
後半の方では愚痴とも思われるような文章も点在し、非常に読み苦しい部分もあり反省しております。
また機会がございましたらいろいろな話題をご提供していこうと思っております。