前奏曲(1929年版)

服部正が慶応義塾マンドリンクラブに入部たのが昭和3年(1928年)、その翌年に既に指揮者としての活動を始めていました。
昭和4年10月に行われた「秋季大演奏会」(逆算すると第33回定期演奏会)に「前奏曲(プレリュード)」という自身の作品を初めて取り上げる事になりました。
マンドリン、マンドラ、マンドチェロ、ギター、マンドローネにフルート、クラリネットの管楽器も加えた、ある意味現在でもよく使われる編成で作曲されたようであり、当時の譜面がかなり良い状態で残っていました。
当時の直筆譜はかなりきれいな書き方をしていましたが、この譜面も同じようにとてもきれいな楽譜になっています。最終ページの右下に「起稿」「脱稿」の月日がきちんと書かれており(脱稿に至っては「時刻」まで記載!!)、当時かなり真剣に、そして丁寧に作曲されたのでは、と感じられます。
戦後の委託作品に忙殺された譜面ははっきり言って「作曲年月不詳」が多く、ここまでデータとして残した作品はそれほど多くはありません。
以降服部正は慶応マンドリンクラブの節目の演奏会では、その演奏会にまつわる「前奏曲」をいくつか書いており、この曲は「初代前奏曲」として貴重な作品と思われます。

前奏曲1929版01 前奏曲1929版02 前奏曲1929版03

前奏曲1929年版 左から「表紙」「冒頭」「最終ページ」。起稿、脱稿のコメントが最終ページに明記されています。