「びらうど」(チェロとピアノのための小品)

服部正の作品はマンドリン、一般オーケストラが非常に多いのですが、ここにあるような「チェロとピアノのための」というような室内楽としての作品は非常に珍しいケースです。
明治39年生まれの「鈴木聡」というチェリストのために作ったとの事ですが、この鈴木聡さんは4~5年間フランスでチェロを修行された方であり、帰国後新交響楽団(現在のNHK交響楽団)に入られ、その際に服部正と親交が出来たようです。
鈴木さんの帰国が昭和7年であり、この曲が作られたのは昭和10年前後と思われますが、この鈴木さんの生い立ち(フランス仕込み?)を意識してか、本人の著書にはこの曲に関し「フォーレばり」の曲になっているとの事です。
服部正自身のリサイタルを昭和11年4月に行っておりますが、そこでこの曲も(恐らく)鈴木聡さんに弾いていただいて披露したのではと思います。
(同じく本コーナーで紹介した「甃の上」も当時親交のあった「太田黒養二」氏の為に作り同じリサイタルに取り上げられました。)
今回お問い合わせを頂いたのをきっかけにここに掲示させていただきました。
是非「フォーレばり」の音を聞いてみたいと思います。

びらうど1直筆-1 びらうど1直筆-2

比較的保存状態が良く、また印刷譜の他、写譜によるパート譜もきれいな状態で残っていました。