前回の「瓊奴物語」に比べれば実に可愛らしい謎の音楽です。
NHKの袋に入っていた中にこの「Mr.T’s story」の譜面はありました。
恐らくNHKから依頼された何らかの短編ドラマか何かの番組の音楽のスコアと思われます。
珍しく譜面を横長につかっています。
その譜面の最初のページの右上に鉛筆で
「Mr.Tの可哀そうな物語」と書かれています。
普通は雑然と譜面が入っているのですが、この「Mr.T」は厚めの紙による表紙が付いており、しかもイラストも入っています。
譜面の状態や筆跡を考えると、やはり昭和30年代前半前後の作品ではと思われます。
譜面から想像するに、ごく一般的なラジオドラマ音楽と思われ、全体で音楽の部分で10~15分程度かと思います。
一度お邪魔したNHK放送博物館でも調べてみましたが、やはり連続物でないのでこの作品の履歴については調べきれませんでした。
そして「謎」です。
この「Mr.T」とは誰なのか?
譜面のあちこちに鉛筆でストーリーのポイントの走り書きが散見されました。
例えば「恋をした」「邪魔者は倒せ」「Mr.Tは憂うつ」、というような物で、何となくこのMr.Tという主人公の哀れな悲恋物語という事も想定されます。
そしてもう一つの謎は「この絵を誰がなぜ書いたのか?」です。
服部正の作品に絵が描かれているのは戦前の作品に多少ありましたが、戦後の作品にはあまり見受けられません。戦前の作品も「服部正の直筆による絵」とは思えない精巧なデッサンだったりしているので、誰かに書いて頂いたのではと思いますが、この絵もそうだとしたら、どのような経緯で書かれたかちょっと気になります。
「気になる」と言うと、この絵の主人公と思われる「Mr.T」、どことなく作曲者の風貌に似てなくもないような気が、、、。(眼鏡をかけてる姿等)
「T」は「正」のT?
こんな想像をしていると、ちょっと面白くなってしまう作品です。