もうすぐ子供にとっては楽しみな夏休みです。夏休みと言えば何といっても「ラジオ体操」のスタンプ集め、というのは昔から有名でしたね。
ところで現在の「ラジオ体操第一」というのは何代目だと思われますか?
実は「三代目」なのです。
初代は昭和3年(1928年)11月にNHKにより東京でまず放送され、そして翌年全国放送となったそうです。この時の音楽は「福井直秋」という作曲家が作った曲でした。
とはいうものの、そもそも「ラジオ体操」のために作ったものでなく「可愛い歌手」というピアノ曲が「体操の伴奏として相応しい」という評価を得て採用されたとの記事があり、今では「可愛い歌手」という個別の曲としてではなく「初代ラジオ体操第一」として残っています。福井直秋氏は作曲家で武蔵野音大の創設者とされており、服部正以上に全国の学校の校歌等を作曲されているようです。
通算17~8年間続いたこのラジオ体操第一もその後太平洋戦争に敗北したことで終止符を打ちました。米軍GHQが「軍国主義的号令付の体操」をラジオで放送することに難色を示したことから、「もっとリズミカルな優美な体操に切り替えて長い歴史を持つこの放送を継続させる方針」を当時の逓信省、文部省、厚生省等が立て、そして第2代の「ラジオ体操第一」を作り1946年4月から放送されました。その時の曲が服部正の作品であり、何と当時のガリ版刷り譜面が遺品の中に残っていました。
ところが当時はまだ敗戦直後で人心も安定せず食糧難も相まって国民が体操する状況になく、体操自体も難しいとの不評で翌年の1947年8月に放送が取りやめになってしまいました。第2代の寿命はたった1年と4か月でした。
そして1950年頃に日本国内の生活も安定してきて「ラジオ体操の復活」を望む声がまた盛り上がってきたので、この2代目の失敗を反省しながら作られたのが3代目の「ラジオ体操第一」です。この曲も引き続き服部正が担当し、1951年5月に放送開始となってから実に今日まで66年毎日放送は続いています。恐らくまだこのまましばらくは続くのではないでしょうか。
ところでこの歴史をしっかりとどめているCDがあり、小生の自宅の近隣の図書館で発見しました。
このCDはラジオ体操75周年で作られたという事なので、恐らく2003年頃に発売されたものではないかと思われます。
早速この「第2代」を譜面を見ながら聞いてみましたが、音楽的にはしっかり完成されている曲でした。冒頭はマーチ風ですが途中からワルツになり、このワルツが実にヨハン・シュトラウスっぽい音楽で、聴いていても楽しくなってしまいそうな曲です。確かに戦後直後にこんな曲をやっても体操する気にならなかったかもしれませんが、もう少し後であれば十分採用されていた可能性があります。
今でも学校だけでなく会社や工事現場でも漫然と流れているこの「ラジオ体操第一」も、誕生までこれだけの紆余曲折があったのかと思うと歴史の重みを感じてしまいます。
今回の内容はこのCDのブックレットと先日お邪魔した「NHK放送博物館」の放送年鑑等からの貴重な情報を使わせて頂きました。ありがとうございました。
追伸
この曲についてのお問合せ(2次使用等)が当館に来ることもございますが、この曲の著作権はすべて「かんぽ生命」が所持しており、「かんぽ生命」のHPにもこの曲の取り扱いについてのご案内が書かれていますので、気になる方はご覧ください。