社歌・校歌のご紹介(15)

社歌のご紹介 ⑤ 明治時代以前創業企業の社歌

今回は業種とは関係なく、明治時代(明治以前含む)から営々と続いている企業で服部正に社歌をご依頼いただいた3社をご紹介します。当然今でもご活躍で皆さんご存知の企業です。

早速創業が古い順番にご紹介します。

まず1858年創業(安政4年)という明治維新の10年も前に創業した「丸紅」社です。
この会社はそもそも伊藤忠兵衛氏が創業した麻、布類の卸売り業ですが、その名の通り「伊藤忠」社とは分割したり戻ったりの歴史が繰り返されて今に至っているとの事です。
この丸紅社は一時期「丸紅飯田」と社名を変えておりましたが、服部正が社歌を作曲した時期はこの「丸紅飯田」時代(昭和30年~昭和47年)の昭和34年で、戦後復興の順調な時代に入ってきた頃です。

丸紅飯田社 社歌(印刷譜)

この直筆譜をもとに丸紅飯田社が印刷譜を作ったものも残されておりました。
作詞を担当された「川村喜太郎氏」については、特に情報が無いので、恐らく丸紅飯田社の関係の方かと想像しております。

その後「丸紅」社と会社名も元に戻った事もあり、この社歌もお蔵入りされたのでは、と思っておりました。
ところが数年前にこの丸紅社から突然文書が来て「社歌の一部を改変したいので、ご了解を頂きたい」とのご意向がございました。一応まだ「社歌」として健在だった事が大変光栄で嬉しく思い、曲そのものの改変ではないので、もちろん応諾致しました。


同じように社歌を改変したいという事でご連絡をいただいた会社として、これも有名な「大日本印刷社」がございました。
大日本印刷社は1876年(明治9年)に「秀英舎」として印刷業を始めた、とのことで、戦後日清印刷社と合併した際に「大日本印刷」社と命名されたそうです。
残念ながら直筆の譜は存在しておりませんでしたが、印刷譜が残されておりました。

工場歌とはなっておりますが、言わば社歌的イメージでお使い頂いているようです。作詞をされた勝先生は様々な社歌、校歌でも有名であり、当時の大日本印刷社の力の入れ様がよく分かります。歌手まで記載されているのは恐らくレコード(ソノシート等)を作られたのではと思いますが、その歌手が「藤山一郎」氏、「伊藤京子」氏という昭和時代ではとても高名な歌手にお願いされているのも驚きです。

伊藤喜商店社歌

最後のご紹介は1890年(明治23年)創業の伊藤喜商店の社歌です。伊藤喜十郎氏が作った会社ですが、これは皆さんご存知の現「イトーキ」で、様々な事務設備・用品等で皆様もご厄介になったことがあるのではと思います。
保存されていたこの青焼き譜は残念ながら服部正の直筆譜ではなさそうで、どなたかが写譜されたものと思われます。
作詞は藤浦洸先生で、これも慶應コンビによる社歌誕生と思われます。商号を「イトーキ」に変更したのは昭和38年(1963年)なので、この曲の作曲時期は恐らく昭和30年代前半ではないかと推測されます。
印刷譜も残されておりました。

伊藤喜商店社歌 印刷譜

実はこのイトーキ社のために服部正はさらに曲を作っておりました。

作詞の竹中郁氏は服部正とほぼ同世代(1904年(明治37年)生まれ)の兵庫県出身の詩人であり、戦後校歌、社歌にも数多くの著作があるそうです。
作曲された時期が1962年なので、まだ商号が「イトーキ」になる1年前ですが、恐らくこの頃は皆さん既に「イトーキ」とこの会社を愛称で呼んでいらっしゃったと思われます。
どのような目的でこの曲を使われたかは不明ですが、付点音符が元気の良いマーチ風に使われているので、何かのイベントや広告関係かと推測されます。

蛇足ですが、現在皆さんがよくお使いになっている「ホッチキス」はこの伊藤喜商店がアメリカのEHホッチキス社から初めて日本に輸入して販売したとの事です。本来この商品は「ステープラー」と呼ばれる種類の文具であり、皆さんよく「ホチキス止めしておいて」なんて日常言っているのも、この「伊藤喜さん」があってこその言葉なんでしょうね。

今回ご紹介した会社は創業100年以上の歴史を持つ日本の代表的な会社ですが、少なくとも2社はまだ何らかの形で社歌としてしっかりご認識頂いている事は大変ありがたく、感謝申し上げる次第です。

館長
1955年 服部正の長男として東京で生まれた。                     1978年 慶応義塾大学卒業(高校よりマンドリンクラブにてフルート担当)        同年    某大手電機メーカーに入社(営業業務担当)                  2015年 某大手電機メーカーグループ会社を定年退職                  現在 当館館長として「服部正」普及活動従事       

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