前回のこのページにてご紹介した「インタビュー」関連書籍として購入手配をしていた全集「黒澤明」第1巻が到着しました。
この全集は黒澤監督の作品それぞれのシナリオ集がメインで、黒澤氏の随筆や関連する記事を盛り込み全部で6巻に亘るようです。第1巻は「姿三四郎」から「虎の尾を踏む男達」までの1943年~45年という戦争真っただ中の作品が収められています。
早速ざっと頁をめくってみましたが、どうも対談集的なものは見つからず、「没になったか、、、」と最後のページに辿り着いたら小さな四角の囲いに「製作余話」というコラムが目に入り、中に「音楽を担当した服部正談」というコーナーを見つけました!確かにテープに収められていた内容の話が記載されておりました。
1時間余の録音で、ここに登場するのはせいぜい2~3分程度の内容でしたが、まあ今も昔も変らない編集作業のようですね。
「わが青春に悔いなし」とか「素晴らしき日曜日」については第2巻だそうですが、黒澤氏と服部正の対立構造が見え始めた頃なのであまりプラスの内容は書かれていない可能性があるので、第2巻の購入はどうするか考え中です。
上記の「服部正談」の内容をこちらに転載します。
「あれはお能の『安宅』だから、謡が不自然にならない様に洋楽にする点で苦心があったが、うまくいったと思う。実に洒落れた映画だ。役者もよかった。特にエノケンはすごかった。黒澤さんの音楽に対する注文は細かかった。その頃の映画はここに何分位の長さの音楽を入れてくれ、というのが普通の注文だったが、黒澤さんのは内容から、音楽をどういう風に使うかという点を深く吟味した。他の監督とは違っていた。
当時はPCLといって技術的にも最先端を行っていたから、オーケストラも専属だったし、仕事はやりやすかった。勿論、今と比べればテープもないし不自由な時代だったが、徹夜が続いても皆、熱心に働いた。仕事にノッていた。」
余話
この「虎の尾を踏む男達」は当初「桶狭間の合戦」をテーマにした「どっこい、この槍」という映画を作る予定が、まさに戦争中のため「走れる馬」の調達が出来なかった、という事で、主役の大河内伝次郎、エノケンをそのまま使ってこの「安宅関」の勧進帳のテーマにした、というエピソードも載っておりました。そして能、歌舞伎とは違う「ミュージカル風」にした事が大きな特徴で、服部正の面目躍如だったのかもしれません。