服部正が生涯を通じて最も多く取り上げた作曲家と言えば、間違いなく「ヨハン・シュトラウス」と言えます。
これはコンセール・ポピュレール(青響)、広場のコンサート、グレースノーツでの大事なレパートリーであり、また慶應義塾マンドリンクラブの演奏会でもたびたび取り上げておりました。
ワルツと言えば「美しく青きドナウ」は定演だけでなく演奏旅行の定番、「皇帝円舞曲」「ウィーンの森の物語」は何回も演奏され、「朝刊」「南国のバラ」や弟のヨゼフの「天体の音楽」等も積極的に選曲しておりました。またポルカは「雷鳴と稲妻」「狩」「トリッチ・トラッチ」やヨゼフの「とんぼ」「休暇旅行」等多岐に亘った選曲をしていました。他にもレハールやフランスのワルトトイフェル等のワルツも積極的に取り上げていました。
マンドリンクラブの編曲版も様々な曲が残されており、まだ時々演奏会で取り上げられて頂いております。
広場のコンサートの第10回の演奏会(1959年10月)は前半がさながら「ニューイヤーコンサート」的な選曲でした。
ここでは父の「ラデツキー行進曲」に始まり、朝刊ワルツ、とんぼポルカ、皇帝円舞曲、雷鳴と稲妻ポルカの後、最後に常動曲、といった有名な曲ばかりそろえておりました。
青響時代は暗い戦時中に少しでも聴衆の皆さんを明るい気持ちにしたい、という事で率先してウィンナワルツを演奏していました。国内や海外の演奏旅行でも皆さんがよくご存知の曲を演奏する事で音楽会が少しでも親しみやすく良い気分で終わって頂くことを服部正は常に考えており、そのような中でこのウィンナワルツ、ポルカの曲は「明るく分かりやすい」演奏会にするために欠かせない、レパートリーに持ってこいの素材だったと言えましょう。