マンドリンオーケストラでの管楽器①

イントロダクション & マンドリンオーケストラでの管楽器とは

 色々な方とお話しする時「フルートを吹いています。」と話すと「どこかで吹かれているんですか」と聞かれます。その時に「マンドリンオーケストラに所属しています。」と言うと、10人中8~9人は「マンドリンオーケストラにフルートがあるんだ!」と意外な顔をされてしまいます。
 フルートという楽器は管楽器の中でも非常に親近感が強く、一般的にはその音色はソロの他オーケストラやブラスバンドで耳にされることが多いのは間違いは無いものの、マンドリンオーケストラというカテゴリーが出てくるのはその筋の方ぐらいではないでしょうか。
 服部正はマンドリンオーケストラにフルートやクラリネットの管楽器を入れることはかなり若いころから積極的であり、特にフルートの吉田雅夫先生が慶應義塾現役の頃から懇意にしていた事もあり、編曲も含めた作品にフルートが入ったものが多数残されています。
 「マンドリンオーケストラ」での管楽器とはどんなものなのかを、アマチュア一般オーケストラも経験したことがある小生がご紹介していきます。

第8回KMC三田会定期演奏会より
(オーボエ、ァゴットも入った木管フル編成)

 実はこのマンドリンオーケストラの中の管楽器というのは非常に特異な存在で、オーケストラや吹奏楽とは違った「コツ」を要求される事が多く、特に管楽器メンバーを常設していないマンドリンオーケストラが賛助で参加されるときは、演奏する側も指揮をする側も受け入れるオーケストラ側もちょっとした気遣いの有無で成果が大きく変わってきます。
 ぜひこのマンドリンオーケストラで管楽器を吹かれる方、またそのオーケストラを引っ張っていく指揮者、コンサートマスター等の方々にもご参考になれば幸いです

まずマンドリンオーケストラでの管楽器は、何を使われるかについてです。

 一般的にはフルート、クラリネットが主に使われます。
 現状のマンドリンオーケストラで管楽器の常設メンバーはたいていこの2種で、他の楽器は必要な時にだけ声をかけるといった形がほとんどです。

マンドリンオケと管楽器のの相性

 ではほかの楽器がなぜ採用されにくいのでしょうか?

 まず「金管楽器」はその音量バランスや音質を考えるとマンドリン族とは異質な物として扱われています。
 ホルンはまだ「馴染み感」があり、服部正が編曲したシューベルトの「未完成」はフルート、クラリネットの他にホルンを入れています。
 他にもたまたま団員や身近にトランぺッターがいたりすると、例えばスッペの軽騎兵序曲やガーシュウィンの曲等でちょっとだけ登場させたりもしていました。
 しかしながらトランペット1本でも相当数のマンドリン族の音をかき消してしまう威力を考えると、金管楽器全般の常時配備は避ける傾向にあります。

 木管楽器でもオーボエ、ファゴットはなかなか入ってきません。
 まずどちらも一般的に他の木管楽器より奏者が多くないという現状があり、招集するにも手間がかかる事と、特にオーボエは音域、音質の双方からマンドリン族の音と「ぶつかる」恐れが多少あるため、使うことに慎重な対応をされる場合が多いようです。
 服部正はオーボエについて以前このような事を言っていました。
 「下手くそなオーボエ1本のおかげで演奏会がめちゃくちゃになった事があり、オーボエは使いたくない。」
 どうもオーボエをマンドリンオーケストラに使うことについてトラウマ的なものがあったようですね。
 (服部正の初期の作品「斑蝶」はフルートとオーボエを採用しておりました。恐らく当時「上手なオーボエ奏者」がいたのでしょう。)

 フルート、クラリネットについては、マンドリンの音質をオブラートのように包み込める音色という性格だけでなく、楽器も比較的容易に購入できることで奏者も多く、昭和初期の頃からマンドリンオーケストラにも採用されてきました。現在でも様々なマンドリンオーケストラが、この編成を引き継ぎながら活動を続けています。

 次回は「マンドリン・オーケストラ」での管楽器の使われ方についてご紹介します。

館長
1955年 服部正の長男として東京で生まれた。                     1978年 慶応義塾大学卒業(高校よりマンドリンクラブにてフルート担当)        同年    某大手電機メーカーに入社(営業業務担当)                  2015年 某大手電機メーカーグループ会社を定年退職                  現在 当館館長として「服部正」普及活動従事       

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