マンドリンオーケストラでの管楽器の使われ方
曲のジャンルによって、管楽器の使われ方が様々です。
昔のマンドリンのためのオリジナルアンサンブル曲については、当然最初から管楽器は入っていなかったため誰かが譜面に追記した形が多く存在します。
このジャンルは基本的にはオリジナルの雰囲気を守る意味でも、大げさな管楽器の登場場面は作らないのが普通です。場合によっては自分の楽団の管楽器のスキルに合わせて、かなり難易度がばらつくアレンジになることもあります。
一般的にはフルートは1stマンドリン、クラリネットはマンドラのサポートにまわる場合が多く、特にレガート、スラーといった音の流れを意識したメロディでマンドリン群のトレモロにきれいに被せる、というミッションが多くなります。管楽器が入ることで「厚み」と「丸み」がアンサンブルの中で加わり、音楽の流れの中でちょっとした変化が生まれます。
ここでの最大の留意点は、マンドリンのピッチ(音程)に管楽器がしっかり合わせる事です。特にフルートはマンドリンのオクターブ上でメロディを吹かせる編曲が比較的多くありますが、高音域でピッチが高くなりがちな特性がある楽器なので、気を付けないと「調子っぱずれ」に聞こえてしまう恐れがあります。
クラシック音楽のマンドリンオーケストラへの編曲作品の場合は、そもそものフルート、クラリネットがそのまま生きる場合が多いものの、該当楽器が存在しない場合はそれだけのために個別に奏者を呼ぶような非効率な事はせず、現存楽器へ任せる編曲が一般的です。
例えばオーボエの美しいソロの部分は1stマンドリンに担当させ(状況によってはコンサートマスターのソロにしたりします)ホルンやファゴットの渋いソロはマンドラが担当します。金管アンサンブルが出てくるとギターがダイナミックにコードを鳴らす等、アレンジャーの腕の見せ所です。勿論フルート、クラリネットが他の管楽器パートを任される事も多々あります。
あくまでここでは主役はマンドリン族なので、目立つソロをマンドリンパート等にもっていかれたり、その楽団、指揮者、管楽器奏者の意向で原曲からいろいろと変わってしまう場合も見受けられます。とはいうものの、オリジナル曲に比べれば管楽器の活躍場所は増えます。その分責任も重くなるため、特にソロの部分はせっかく順調に行っている音楽の流れを止めないように演奏する気遣いが必要です。
ポピュラー曲はそれこそ編曲が命になっており、ここではアレンジャーのセンス、力量で管楽器の見せ場や負担が大きく変わってきます。有能なアレンジャーだと演奏していてモチベーションも大いに上がりますが、大事なことはアレンジャーがどのような効果を期待して管楽器に託した編曲をしているのかを理解し、それを演奏で実現させることです。
ここでは「譜面に忠実」もさることながら、多少のアドリブや装飾音符の追加等が許される限り出来るセンスも備わってくると、オーケストラ全体が盛り上がってきます。
服部正は海外、地方の演奏旅行ではお客様に少しでも楽しんでいただけるように、様々な有名ポピュラー曲や日本の名曲を編曲してコンサートのプログラムに組み入れてきました。そこにはマンドリンやギターの哀愁を帯びたメロディの中にも管楽器、打楽器を効果的に入れて「飽きさせない」工夫も要所要所にしておりました。
このような演奏旅行では旅程の後半になってくるとメンバーも大いに慣れ、様々なアドリブが飛び出したりしましたが、服部正はニヤッと笑いながら指揮をして見守っていました。
次回はフルート、クラリネットの楽器(特に特殊楽器)についてです。