服部正が本格的なマンドリン音楽を書き始めた頃の作品ですが、本人もこの曲は比較的気に入っていたようです。
まず初演は昭和11年(1936年)6月の慶応義塾大学マンドリンクラブ46回定期演奏会にて取り上げられ、以後昭和18年(1943年)の60回定期演奏会、そして昭和43年(1968年)の記念すべき第100回演奏会ではかなり手を加えられて取り上げられておりました。
この曲はソプラノ独唱と合唱団も必要とする、当時としてはかなり大規模な編成を必要とするため演奏会でしょっちゅう取り上げにくい作品ではありますが、音楽界での様々なコネクションを使ってメンバーを集め都度演奏されてきたようです。
また一般オーケストラ用にも編曲されたようであり、その譜面も一部残っております。
これがきっかけで、マンドリンオーケストラでの独唱、合唱を伴う曲も積極的に取り組み、戦後の「お姫様シリーズ」(かぐや姫、白雪姫、人魚姫、ナイチンゲール等)のミュージカルファンタジーの誕生の礎になったとも思われます。
この度またこの曲を取り上げて頂くような機運も見えており、実際の音を聞くのが楽しみです。
昭和8年の初作版の譜面。表紙は和紙でコーティングされており、かなりどっしりとした楽譜です。