お話でてこい~NHKラジオ番組

この番組は昭和29年(1954年)11月から始まり、主に小学校以下の子供たちに様々なお話をラジオで放送するものですが、何といまだに続いている、という希少価値の番組です。
服部正は第1回目から昭和36年(1961年)3月までの6年以上もの間、この番組の音楽を担当しておりました。

実は服部正の放送局委嘱作品で最も曲数が多いのが、この「お話でてこい」でした。
現在所蔵している楽譜で最もスペースを取っており、譜面の数にして391冊!
期間(333週)から割り振ると毎週1.2冊のハイスピードで書いていました。
1冊に2つ以上のの物語の音楽を作曲していたりする場合もあるので、実際の曲数は500曲をはるかに超えていたと思われます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
(下段:予告編、第1回目、上段:1961年の服部正として最終回の譜面)
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
(合計391冊の「お話でてこい」関係譜面。中抜け紛失もあります。)

小さなアンサンブルによる音楽だったので、フルオーケストラを書くほど手間はかかっていないとはいうものの、6年と4か月毎週決まってこの番組のために作曲をする、というのは週刊誌の連載物を同期間書くのとほぼ同じような負担であり、一般の会社のサラリーマンだったら音を上げるところですね。

「お話」は様々な物語でしたが、さすがに6年もやっていると同じ物語を再度取り上げていることも多く、しかしながら前作を引っ張り出しているのではなく別の譜面として用意していました。
以前も「館長の独り言」でも書きましたが、譜面の保管管理に今一つ難があった服部正にしてみれば、「探すくらいだったら作っちゃえ」という意識だったと思います。さすがにこれだけの冊数があると確認しきれていませんが、今度同じ物語で音楽が変わっているのか調べてみたいと思います。

お話出てこい第1回表紙 お話出てこい第1回1P

(第1回目の音楽。フルート、クラリネット、ピアノ、ドラム、ヴァイオリン、チェロという編成でした。譜面のハンコはNHKの受付印です。)

本シリーズのうち、いくつかをMIDIで音源としてこのHPに用意いたしました。(2017/1)