先日ダーク・ダックスのゲタさんの訃報を投稿に出しました。
服部正がダーク・ダックスとのコラボレーションで様々な曲を作・編曲してまいりましたが、その中でも大作の一つ「かぐや姫」をご紹介します。
服部正は1955年頃から慶応義塾マンドリンクラブにて「お姫様シリーズ」と題して様々なミュージカル・ファンタジーを作曲してまいりました。最初に「人魚姫」を作り、相次いで「シンデレラ姫」「かぐや姫」「白雪姫」「ナイチンゲール」と作曲し、当時並行して実施してきた「広場のコンサート」向けにオーケストラ編曲をしたバージョンもいくつかありました。
「かぐや姫」は言うまでもなく「竹取物語」に出てくるお姫様であり、今回はそのオーケストラ編曲用の譜面をご紹介します。
これは1957年12月と書かれていますが、1958年4月に上演された広場のコンサート用のバージョンと思われます。慶応義塾マンドリンクラブでの初演は1957年12月1日でしたので、その後すぐにオーケストラ用の編曲に取りかかったものと思われます。
この時のコンサートのチラシとプログラムの「かぐや姫」記事が遺品の中にありましたので、それもご紹介します。
当時としてはダーク・ダックス、中原美沙緒(ソプラノ)、三國一郎(語り手)というかなりのスター級を揃えたコンサートでした。
ダークダックスはかぐや姫を巡る4人の王子様の役で登場しており、非常にセンスの要する役柄なので「ダーク・ダックスありき」の曲となっていると言っても過言ではありません。
(この「かぐや姫」を私も現役時代演奏する事が出来ましたが、その時もダークダックスと三國一郎氏に出演頂き、その素晴らしいパフォーマンスに舞台上で感動してしまいました。)
そのため数々の「お姫様」シリーズでもこの曲の上演はコストが結構かかり、当時のマンドリンクラブの運営側としては収支調整にかなり苦労していたのではと、余計な事を今さらながら慮ってしまいました。
このお姫様シリーズ、まずは処女作の「人魚姫」からと思っておりましたが、先般の喜早氏のご逝去の報に接し、この曲からご紹介することにしました。
掲載のプログラムでのかぐや姫記事の内容は下記の通りです。(関心のある方は是非お読みください)
ミュージカル・ファンタジー
かぐや姫
服部 正
音楽会で、オペラやオペレッタまでいかなくても、何かそれに近いことは出来ないものかしら?私は十年位前からこういう夢をもっていました。数年前、慶応義塾マンドリンクラブで、私が慶応を出てから二十五年目に当るということで、私のために音楽会を開いてくれることになった時、私はこのK・M・Cの好意に感謝する意味で、二人の独唱、二百人の合唱百人の楽団と一人の語り手による「人魚姫」を作曲したのでした。
そして、これにミュージカル・ファンタジーというタイトルをつけました。お話と歌と音楽でアンデルセンの名作「人魚姫」を私の思うままの自由な手法で書き上げることでした。これは私の思ったよりも聴き手に感銘を与えることが出来ました。
これに気をよくした私は、次に「シンデレラ姫」をその次に「かぐや姫」をと慶応マンドリンクラブのために書いたのでした。そして、この「かぐや姫」はダーク・ダックスと中原美沙緒さんの持味を十分に考えて書きました。
美沙緒さんの「かぐや姫」は前からねらいをつけていたので、文句なしだったのですが、この美沙緒姫を追う四人の若者 石作りの皇子(高見沢君)車持の皇子(佐々木君)阿部のご主人(喜早君)大伴の大納言(遠山君)の活躍が絶讃をあびました。K・M・Cの舞台以外にラジオにテレビに上演されましたが、「広場」でやってほしいというお声が多かったので、ここに改めて上演する次第です。
私の構成したプロットによって伊藤海彦さんが歌詞と台詞を書いて下さいました。
1)序詞(ダーク) 2)かぐや姫の出現を喜ぶ老夫婦の歌(ダーク) 3)かぐや姫のうた(中原) 4)かぐや姫へ求婚する四人の若者の歌(ダーク) 5)かぐや姫の条件呈出とそれに答える若者達(中原とダーク) 6)若者達の計略と失敗(ダークと中原) 7)お月様の独唱とそれに答えるかぐや姫(ダークと中原) 8)昇天してゆくかぐや姫の歌(中原) 9)終曲 かぐや姫を讃える歌(ダークと中原)