服部正の初の「ピアノ曲」です。
残念ながら直筆の譜面ではなく、当時月刊誌として発行されていた「月刊楽譜」という雑誌の付録についていた印刷譜が遺品の中に残っていました。
まず余談ですが、この「月刊楽譜」という雑誌の存在に驚かせられます。
創刊は明治45年という事であり、そもそもこういった「楽譜」ものの月刊誌が明治~大正~昭和にかけて発刊されていたことにびっくりさせられます。
この「Prelude 1」は「Prelude 2」と合わせて服部正の作品として昭和7年の11月号に付録として掲載されていました。
作曲当時の日記(昭和6年)が残っており、ここの経緯で面白い部分があるのでご紹介します。
6月21日(日曜)
「ピアノ曲を生むの苦しみ。生れてはじめて書くピアノ曲。どうしたらいいか頭が痛くなる[程?]考へ(え)る。ピアノが買えるかも知れぬ。」
マンドリン曲とかオーケストラ曲は比較的すいすいと筆が動いていたのでしょうが、この「ピアノ曲」誕生に相当苦労していた様子が伺えます。
さらに驚いたのは「ピアノが買えるかもしれぬ」と書いている事は、ピアノが手元にない状態で作曲していたと思われ、どこかのピアノを弾かせてもらったとはいえこんな環境でよくもピアノ曲を作曲出来るものだと呆れてしまいますね。
歌の伴奏等でのピアノパートはいくつもありましたが、後にも先にも純粋なピアノ曲はあまり残されてなく、貴重な1曲です。