先日ご案内した京都でのB-one絃楽合奏団の演奏会に伺って参りました。
譜面は存在するものの実音を聴いたことのない作品の一つである服部正の「斑蝶(まだらちょう)」を演奏していただける、という事で、当日は混雑する京都の名所をちょっとだけ訪れた後に演奏会場に赴きました。
演奏会では冒頭の曲としてこの斑蝶を取り上げて頂きましたが、その他にも鈴木静一先生やイタリアの有名なマンドリン曲の作曲家である「アマディ」「ファルボ」「マネンテ」の作品も演奏され、非常に恐縮して会場の席に座りました。
この曲の指揮をして頂いたのはこの団でマンドリンも弾いていらっしゃる「辻本篤人氏」で、当方にも何回かメール交換しただけでなく、わざわざ東京までお見えになって色々とお話させて頂きました。
初めて聴く斑蝶、主題のメロディーはいかにも初期の服部正らしい音楽で、約5分ぐらいの曲でしたが実に丁寧に、またエネルギッシュに演奏していただきました。
この曲は楽器編成として通常のマンドリン合奏にいくつかの打楽器とフルート、そして意外なのはオーボエとファゴットを入れています。当日の演奏会では合奏の規模が比較的こじんまりとしていたのでフルート、オーボエと最小限の打楽器でご対応頂きましたが、これが実にうまくマッチしていたのではと思いました。
昭和5年の1月の作曲なので服部正はまだ22歳になる直前で当然在学中であり、いかにも「若気の至り」的な作品でしたが、ここから「迦楼羅面」や「絵本街景色」の作風に繋がる貴重な作品としての位置付けにもなるような思いをしました。
記録を辿る限り再演のデータが無く、服部正もその後の「迦楼羅面」等の作品に比べると再演に及ばず、と思ったのかもしれません。そういった中で先日演奏していただいた絃楽合奏団B-oneの皆様、辻本様に心より敬意を表し、御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。